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袋田瀧

画像:季節の袋田瀧

範囲

大字袋田字滝本、大北向、月居、野土、地蔵堂、町井沢、前山、前原、川端、カケ山、長瀞、畑ケ中、上ノ台、上ノ台入、峯ノ草、湯端、湯島、森ノ上、堀切、炭焼場、日向道、沼ノ沢、根柄、町、片根
大字小生瀬字小部繰、滝口、陣場、山王下、井戸入、月居坂、吹上、トオメキ、坂下、二川原、戸ノ内、諏訪前

指定当時の担当調査委員理学博士野原茂六の調査報告

袋田瀧ハ一ニ四度ノ瀧卜称シ高サ百二十餘米幅七十餘米アリ三折四段ニ落下ス。瀑水ハ暫時東ヨリ西ニ流レテ瀧川トナリ更ニ南流シテ遂ニ久慈川ニ合流ス。
瀧ハ前方ノ山腹ヨリ望メバ樹間布ヲ引ケルガ如キ奇観ヲ呈ス、此地狭隘ノ處幽邃ニシテ未ダ俗ニ化セズ春ノ稚葉、夏ノカジカ、秋ノ紅葉、冬ノ白雪四時佳ナラザルハナシ。四度ノ瀧ノ上流七十米内外ニシテ又一瀑布アリ之ヲ生瀬瀧卜云ヒ落差十二米内外幅十二米内外アリ。月居峠ノ旧蹟、烈公ノ碑等アリ。コノ地亦山地植物多クアリ就中くまがゑさう、うてうらん、いはひば等ハ珍ラシク殊ニ保護ヲ加フベキモノナリ。昨今遊覧人非常ニ多ク競争的ニ売店等施設アリ猥ニ風致ヲ害スルヲ恐ル。
瀧以外ノ広範囲ヲ指定シ、瀧附近ノ現状変更ハ勿論山地植物ノ採取ヲ禁止シ保護ヲ加ヘントス。

袋田の滝と文人墨客の来遊

袋田瀧は、一般に袋田の滝と記名され、呼称されていています。高さ120m、華厳の滝(日光市)、那智の滝(那智勝浦町)と並んで日本三名瀑の一つに数えられ、四段に落下するところから、別名「四度の滝」とも呼称されています。弘法大師四度護摩修行の伝説や西行の和歌も伝えられています。かつて日本二十五勝の一つに挙げられ、奥久慈県立自然公園の中心的景観を成しています。
袋田の滝の成因は、この附近の男体山火山角礫岩層の硬い岩石に対し、滝の上流と下流が浸食されやすい凝灰質の砂岩や頁岩だったため、硬質の火山岩が造滝岩となり、火山角礫岩層中の節理と断層面中に水が流れ込み、滝川の浸食作用で段差が大きくなっていったものと考えられていています。さらに、流路の途中に四本の大きな節理があるため、四段の滝が形成されたといわれています。また、袋田の滝の上流には、段差が約15mほどの生瀬滝もあり、周囲の峡谷と調和してすばらしい景観を形づくっています。
春は新緑に映え、夏は落下する水音がこだまし、秋には紅葉に彩られ、冬には厳粛な氷結の滝となります。この四季折々に変化する滝には、かつて多くの文人墨客が訪れ、それぞれに和歌や俳句、漢詩などを残しています。

袋田の滝附近の植物相

袋田の滝及びその周辺は、景勝の地であるばかりでなく、また植物の種類も豊富です。滝を囲む月居山や生瀬富士など安山岩質火山角礫岩のこの地には、特有の植物が生育しています。主な植物を挙げると、エゾノヒメクラマゴケ、イノモトソウ、フクロダガヤ、ギョウジャニンニク、ニラ、ミヤマスカシユリ、ヒナラン、ウチョウラン、コケミズ、チチッパベンケイソウ、フジキ、ハヤザキヒョウタンボク、オヤリハグマ、ハクサンハタザオ、イワヒバ、カタヒバ、リョウブ、マルバアオダモ、ダンコウバイ、チョウジザクラ、ツクバネ、ミツデカエデ、コナラ、キハダ、バイカツツジ、ガマズミ、タマアジサイ、イワギボウシ、キリンソウ、シノブ、ヒカゲスゲ、ニッコウキスゲ、バイカウツギ、ヒオウギ、ヤマシャクヤクなどがあります。このうちフクロダガヤは、明治42年(1909)8月1日、安藤伊作によって袋田の滝付近で発見され、新種として登録発表されたものです。
これらの植物は、地域開発などに伴う自然環境の変化の中で、急激にその数を減らしたり、植物相に変化を来して行くことが多くあります。滝の保護管理とともに、こうした植物を含めた自然保護管理体制の基盤づくりが重要な課題となっています。

 

地図を見る:袋田瀧

※別ウィンドウで地図が表示されます。

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