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泉町屋台

画像:泉町屋台 

制作年代

向拝の棟飾りの加藤清正像の胴内墨書には、「弘化二年 乙巳 七月吉祥 造之」「泉町 若者 彫工 後藤源治 呑安」とあります。弘化2年(1845)の墨書は、他7町内会の屋台中で最古のものです。その他にも、制作年代が古いと考えられる部材もありますが、多くの部材は第二次大戦中の屋台を出さなかった期間に紛失しており、柱や梁等構造に関わる部材は、おおむね後世の修理の際に取り換えられていると考えられます。向拝の棟飾りの虎は、昭和31年(1956)に塗り替えを行っています。昭和60年(1985)に茨城県つくば市で行われた国際科学技術博覧会に出場しており、これを記念して幾つかの部材が新調されています。心棒は、「祝 科学万博 十二所神社春の大祭(愛宕神社)記念 昭和六拾乙丑歳弐月吉日(栃木県鹿沼市乾友久作)」と墨書があります。箱棟に乗せる鯱の箱蓋裏には、「昭和六拾乙丑歳五月 科学万博協賛 十二所神社 春の祭禮記念製作」と墨書があります。また、軸(胴)の部材に「平成6年5月新調」と墨書あります。その他、大八車も近年新調されたものと考えられます。

構造形式

前方は彫刻で装飾された向拝、後方は吹抜けで囃子方が乗る、単層二連屋形屋台です。大八車の二輪車で、大八車の心棒に、前後に長い梶棒が2本乗り、麻縄で巻付けます。梶棒上に4本の横材を渡し、ボルトで留め、向拝と本屋を乗せます。向拝よりも本屋を一段高くしています。向拝と本屋境の両脇柱からは、袖幕掛けを出し、袖幕を掛けます。
向拝は正面に唐破風を構え、正面柱間は1本溝で4枚の彫刻を施した格子戸が入ります。ここには、男性3名と女性1名が彫られていますが、このうち男性3名の題材は、人物の表情や動き、着物の柄等から、葛飾北斎の「唐詩選画本 七言律」を参考にしたものと考えられます。向拝柱は、栗鼠と葡萄を一木から掘り出したもので、上部には出三斗を乗せています。本屋屋根は反りのある切妻屋根、板葺で、箱棟の上に鯱を乗せています。両脇には、高欄を設け、囃子方は背面から出入りができるように踏台を設けています。屋根の表面の横材は、屋根の上に乗る人が足を滑らせないよう取り付けた後補材です。

彫刻、装飾類

向拝の棟飾りは、加藤清正の虎退治、中央に槍を振りかざした清正と、左右に牙を剥きだして抵抗する虎で、胴内には、「弘化二年 乙巳 七月吉祥 造之」「泉町 若者 彫工 後藤源治 呑安」と墨書されています。懸魚と欄間は龍、蹴込みは獅子と牡丹、前柱は栗鼠と葡萄、脇障子は高砂と鶴亀で、全て彩色が施されています。
彫刻師の黒崎孝雄氏が、平成18年から25年(2006~2013)にかけて新造したものとして、以下のものがあります。制作年代は、箱蓋の裏に墨書が記されています。平成18年(2006)には、後部腰板(竹林清流)、横腰板左側及び右側(竹虎群遊)を新造しました。本屋後妻飾り(白虎と青龍)、本屋前妻飾り(玄武と朱雀)は、平成21年(2009)に新造しました。当初の妻飾りは紛失しており、代用として板に絵が描いてあったといいます。平成25年(2013)には、向拝両脇欄間(桜・梅)を新造しました。これも、当初のものは破損が進んでおり、図柄を復原する形で新造しました。桜の絵柄は、8割が現存していたので、これを基に復原を行いました。梅の絵柄は、1/4から1/3程度が現存していたので、これを基に復原を行ったといいます。
江戸期に、日光東照宮の彫刻師が江戸に帰る途中に大子に寄って、泉町の屋台の彫刻を造ったという言い伝えが残っています。

彫刻師の黒崎孝雄氏(栃木県鹿沼市)が請け負い、平成18年~25年(2006~2013)に新調しました。また、昭和の御大典(昭和3年・1928)時に使用した紅白幕は、第二次大戦後の保管庫から発見した折には鼠の巣となっており、河原で焼却処分したといわれています。

保管方法、屋台倉庫

泉町は、久慈川西側に位置しますが、屋台倉庫は久慈川東側の山裾に建てられています。大谷石組積造2階建、切妻造。1階は妻入、2階は平入にシャッターを取り付けています。昭和47年(1972)に1階を新築し、昭和63年(1988)に2階を増築しました。倉庫1階に寄贈者の扁額があります。かつては、町内の各家が彫刻類などの屋台の部材を保管しており、祭りの度に持ち寄ったといわれています。第二次大戦中は屋台を出すことを自粛しており、その間に売却されるなど紛失してしまった部材もあったといわれています。第二次大戦後は、屋台の部材の多くを保管していた藤田クマジ氏の指導の下、足りない部材は大工に発注するなどして、昭和20年代には再び屋台を出すことができたといわれています。

 

  • 区分:その他の文化遺産
  • 種別:有形民俗文化財
  • 員数:1台
  • 所在地:大子字泉町地内
  • 制作年代:向拝の棟飾りは弘化2年(1845)、その他構造材は後補材が多い。
  • 規模:間口(柱端間・柱巾含む。)2.180m 奥行き(前後柱端間・柱巾含む。)3.229m 高さ(棟木上端まで)4.284m

地図を見る:泉町屋台

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